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一級建築士事務所オーガニックテーブル代表
善養寺 幸子さん

中学時代の増築経験で「自分のイメージ通りの部屋ができなかった」ことに不満を感じたのが「建築家」という職業を目指す原点に。芸術系高校を卒業後、住宅設計を学び始める。構造設計事務所、意匠設計事務所などを経て、1993年オーガニックテーブル設立。
[ホームページ]
http://www.at8.co.jp/ot/  

インフォームド・コンセントの家づくり

Q.  名刺やHPで「インフォームド・コンセント」という言葉を掲げていらっしゃいますが、住宅建築におけるインフォームド・コンセントとはどういうことでしょう?
A. たとえば、希望を実現するための手段は、予算内ではできないことまで含めて、あらゆる可能性を示すこと。たとえ高額の費用がかかっても、その人にとってどうしても必要なら、他の何かを諦めてでも実現しようと考えるかもしれないでしょ?
 また、確認申請時にお役所と意見が食い違ったり、工事中に近隣から苦情が寄せられたりと、住宅が完成するまでの過程には、トラブルも発生します。これまでは、そういうことをお客さんに知らせずに片付けようとする傾向があったと思うんですね。
 でも、プロセスがわからないままでは、お客さんには不信感が残ります。設計者と建て主とは、対等な立場のパートナー。マイナス面も含めて、あらゆる情報を共有し、一緒に悩んで一緒に解決していこう、ということなんです。
Q. そのためには、相当な話し合い、相互理解が必要になるでしょうね。
A. ですから、じっくり腰を据えてお話できるように、初回の打ち合わせ日には他の予定は入れません。また、必ず今のお住まいをお訪ねして、その方の住まい方を見ておきます。住まい方のクセって治らないものですし、それが受け入れられない家は辛いですから。
Q. 打ち合わせでは、どんなことを話し合うのですか?
A. 日頃の生活ぶりから社会現象への意見まで、世間話しながらその人の家への価値観、設計のキーワードになるようなことを引き出していきます。お客さんにお願いするのは、心の中で密かに思い描いている夢を、包み隠さず話してくださいってこと。「言ったら恥ずかしい」とか「どうせ無理でしょ」なんてのはナシにしてほしい。極端な話、「空飛ぶ家」だってできないとは限りません。
 家づくりのための会話にタブーをつくってはだめ。家は今後30〜40年、もしかしたら100年も建っているかもしれないんだから、そこで家族が死んでいくことだって、前向きに見据える必要があります。
Q. 実際の設計にあたっては、どんなことを心がけていらっしゃいますか。
A. 住まい手がどこでどんなことをするか、じっくり考えながらつくります。たとえば写真の家では、「広いLDKが欲しい」という要望が出されたんですが、そこで何をするか、と考えたら、食べることでしょ。結果、リビング抜きの「広いダイニング」になりました。
 住宅は、住む人の生活によって変化していくアートだと思っています。完成したあとは、住む人のもの。私がつくっておかなくてはならないのは、温度や湿度、日当たり、など五感に訴える部分です。住んだ人の気持ちや、そこで育っていく子供、写真には写らないそうしたものが、私にとっての「作品」になるのだと思います。

エコロジカルな住宅とは

Q. ご自宅「アクティブエコ住宅」は太陽エネルギーや中水、雨水利用などエコシステムのフル装備ですね。
A. そもそもの発端は、夫の活動なんです。彼は環境運動に取り組んでいるのに、実生活では電気をつけっぱなしにしたりする。それでは辻褄が合わないから、「誰にでも省エネルギーできる」家にしようと決めた。太陽光発電だけではイニシャルコストが高くて割に合わないので、ランニングコストでお得になる太陽熱温水器を組み合わせたり、中水(生活排水のリサイクル)利用だけのつもりが、雨水利用もすることになったりと、設計するうちにどんどん発展していったんです。
Q. 設備費だけで、かなりの費用がかかったそうですが・・・。
A. エコ設備だけで1000万円ぐらいでしょうか。でも、そのぶん内装費用などを抑えてあるから、坪単価で比べると、ほかのコンクリート住宅と同じぐらい。結局、何に価値観を見いだすか、どこにお金にかけるかという違いだけです。
Q. これから家を建てる人にもエコハウスをすすめますか?
A. 私のエコロジーへの関心は、もともと住み心地への関心から始まっているんです。地球レベルでどうこういう以前に、住む人自身のこと。エコロジーも、その人が、社会に対してどうコミットするか、その姿勢しだいです。だれだって、環境問題に関心はありますよね。だからその人の良心で、できるだけのことをすればいい。環境に与える影響の大きさを考えれば、「ひとりの100%よりみんなの10%」ではないでしょうか。  たとえば、生ゴミ処理設備や食器洗浄機などは、なんといっても使ってラクができる。ラクから始まって、環境に負荷をかけないことにつながるんですよ。  今後は、もっと断熱性や駆体蓄熱について考えていきたいですね。設備で「暖かく涼しい」環境をつくるのではなく、建物自体で「暑くも寒くもない」状況をキープすること。それができれば、結果的に、そんなにエネルギーを使わずに生活できるはずだと思います。

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聞き手:萩原 詩子
フリーランスエディター&ライター。
住宅雑誌などの編集者を経て1997年独立。住まいづくり・住まい選びをテーマに取材・執筆活動を行う。
共著に 「住宅購入チェックリスト」東洋経済新報社刊。


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